平成31年/令和元年  今月の病気

木の実(ナッツ)アレルギー

Q:どのような木の実でアレルギーが起こりますか?
A:アレルギーを起こす木の実として、クルミ科のクルミ」と「ペカンナッツ(ピーカンナッツ)」、ウルシ科の「カシューナッツ」と「ピスタチオ」、バラ科の「アーモンド」、カバノキ科の「ヘーゼルナッツ」、サガリバナ科の「ブラジルナッツ」、ヤオギリ科の「カカオ」、ヤシ科の「ココナッツ」があります。
 「クルミ」はクルミ科に属すため、クルミアレルギーの人は同じクルミ科に属する「ペカンナッツ」にもアレルギー反応が出ます。同様に、「カシューナッツ」と「ピスタチオ」はともにウルシ科に属するため、両方にアレルギー反応が出ることが多いです。
 一方、科が異なる木の実を食べてアレルギー反応が出る可能性は低いので、それぞれのナッツについてアレルギーの有無を確認する必要があります。

Q:クルミアレルギーの原因は?
A:クルミに含まれる「Jug r 1」などのたんぱく質がアレルゲンとなり、食物アレルギーを起こします。白樺、ハンノキ、シラカンバなどのカバノキ科の植物の花粉症のある人は、交差抗原性(ちゅっNo137)があるクルミに対してもアレルギー症状が出る可能性があります。
(注意)クルミには「セロトニン」という物質が含まれています。クルミにアレルギーがない人でも、クルミを食べすぎると「セロトニン」が体内に多く入ることで、アレルギーの様な症状が出ることがあります。
※ ヘーゼルナッツはシラカバ花粉、リンゴなどのバラ科果物、セロリなどのセリ科野菜と共通抗原があるため、これらの食物を食べてアレルギー症状が出る可能性があります。※ チョコレートの原料になるカカオにはチラミンやテオブロミンという物質が含まれており、カカオにアレルギーがない人でも、食べすぎると、じんましんや痒みなどのアレルギー様症状や偏頭痛を起こすことがあります。

Q:木の実アレルギーは増えているのですか?

A:2017年の食物アレルギーによる健康被害の全国実態調査で、木の実類がアレルギーの原因食物の4位になりました。(2014年は3.3%で8位でした)

内訳は、クルミが最も多く(木の実類の63)、次いでカシューナッツが(21)、アーモンド(5)でした。他にマカダミアナッツ、カカオ、ヘーゼルナッツ、ピスタチオ、ココナッツ、ペカンナッツ、クリの報告がありました。

クルミとカシューナッツは、すでに食物アレルギーの表示推奨品になっていますが、この結果から、アーモンドが表示奨励品に追加されました。

Q:発症年齢は?

A:36歳が最も多いですが、12歳でアレルギー症状が出る子どもさんも多いようです。

7歳を過ぎてから出る場合もあります

Q:症状は?
A:他の食物アレルギーと同じで、皮膚の痒み、じんましん、湿疹、口の痒み、目の痒み、鼻水、腹痛、嘔吐、咳、喘鳴(ゼイゼイ)などの症状がみられます。重症になるとアナフイラキシー(複数の症状が重なります)の状態になり、血圧が下がって意識がなくなる(アナフィラキシーショック)場合もあります。ナッツアレルギーでは強い症状が出ることが多いので注意が必要です。

Q:検査は?
A:当院では、採血して特異的IgE検査を調べます。
検査可能な木の実は、クルミ、カシューナッツ、アーモンド、カカオ、ハシバミ(ヘーゼルナッツ)、ブラジルナッツ、ココナッツ、ペカンナッツの8つです。クルミが陽性の場合はJug r 1、カシューナッツが陽性の場合はAna o 3というアレルギーの原因となるたんぱく質のIgEを測定することで、診断精度を高くすることができます。


昆虫アレルギー

Q:どんな昆虫がアレルギーの原因になるの?
A:アレルギーの原因としてわかっているのは、「ガ」「ゴキブリ」「ユスリカ」です。
「ガ」は衣類に発生する「イガ」と、穀物などの乾燥食品に発生する「メイガ」があります。
ご存知の「ゴキブリ」は日本ではアレルギーの原因としてあまり注目されていませんが、外国では「コックローチ喘息」という名前がある位ポピュラーです。
ユスリカは蚊に似ていますが、吸血しない昆虫です。屋外にいますが、灯りに誘われて室内に入ってきます。
糞や虫の死骸、ガでは翅(ハネ)をおおう鱗粉がアレルゲンになります。
昆虫のアレルゲン量は春と秋に増えるため、秋に鼻炎や喘息症状が悪化します。

Q:検査方法は?
A:特異的IgE検査で有無がわかります。小児では、ダニ、スギ、イネ科に次いで陽性率が高いと言われています。

Q:対策は?
A:昆虫の発生場所の清掃や防虫を行います。

昆虫

原因

発生場所

対策


体長 5-7mm


鱗粉

【メイガ(幼虫)】 乾燥食品、戸棚、食品保管庫【イガの幼虫】
ウール・絹製品(衣類)

【成虫】幼虫の発生場所付近に生息、部屋内を飛行、夜行性のためあまり気づかれない

密閉性の高い食品保存容器発生した食品の廃棄、付近の掃除
カーテンの定期的洗濯

クローゼットの奥や隙間の掃除
衣替え時は洗濯してから収納着用
蛍光灯の笠やカバーの清掃、防虫剤

ゴキブリ

死骸

台所、ふろ場、洗面所
冷蔵庫の裏や隙間、

ごみ箱下

捕獲器(ホイホイなど)
冷蔵庫の裏や隙間の掃除

蓋のあるゴミ箱

ユスリカ

死骸

河川、用水路、側溝

網戸で侵入を防ぐ、室内清掃(侵入してくる)窓付近の清掃


秋の花粉症

秋の花粉症の主な原因はブタクサやヨモギで、道端、公園、河川敷、空き地など、どこにでも自生しているありふれた植物です。「秋に河川敷をジョギングしていたら、咳き込んだり、鼻水が出たりした」「秋になると目が痒くなる」などのエピソードがあるようでしたら、アレルギー検査をお勧めします。
原因は?

ブタクサはキク科の植物で、黄金色の花を咲かせます。花粉飛散期は8-10月(ピークは9月)です。明治以降に入ってきた外来植物です。ブタクサによる花粉症はスギ、ヒノキに次いで3番目に多く、秋の花粉症の原因としては最多です。
ヨモギもキク科の植物で、紫色の花を咲かせます。花粉飛散期は8-11月で(ピークは910月)です。草餅の材料で、日本在来の植物です。他にキク科のアキノキリンソウ、アサ科のカナムグラなどがあります。

スギ花粉症との違い ブタクサやヨモギは花粉の粒子が小さいため、気管に入って喘息のような咳症状を引き起こすことがあります。一方、スギは花粉の粒子が大きいため、鼻粘膜に留まりやすく、くしゃみ・鼻水が主症状となり、気管や肺への影響は少ないとされています。
口腔アレルギー症候群 ブタクサ花粉はメロン,スイカ,キュウリなどのウリ科の食物などと交差抗原性があるため、ブタクサ花粉症の人がメロンやスイカを食べると、口の中が痒くなるといった症状(口腔アレルギー症候群)が出ることがあります。  ヨモギ花粉症はニンジンやセロリなどのセリ科の食物で口腔アレルギー症候群を起こします。
対策は? 秋の花粉症の原因となる花粉は、飛散距離が短く、数十~数百メートルしか飛散しません(スギ花粉は数十キロ以上)。したがって、その植物が生えている周辺に近寄らないだけでも十分予防になります。花粉の飛散時期に、原因植物が生えている空き地や河原には、近づかないようにしましょう。


蜂刺傷とアレルギー

蜂はミスズメバチ、アシナガバチ、ミツバチの3つに分類されます。スズメバチ、アシナガバチのアレルゲンは共通性があります。一方、ミツバチのアレルゲンはスズメバチ、アシナガバチとの共通性が低いです。  
そのため、
1回目スズメバチ、2回目アシナガバチ に刺された場合は重症化の危険性が高い
1回目ミツバチ、2回目アシナガバチ  に刺された場合は重症化の危険性が低い ことが解っています。

症状は?

ほとんどは軽症で、刺された部位の発赤、腫脹、痛みがみられる程度です。
全身のじんましん、吐き気、嘔吐などの消化器症状、咳、喘鳴(ゼイゼイ)、呼吸困難などの呼吸器症状、血圧低下、ショックなどの循環器症状がみられたら重症です。これらは蜂毒に対するアレルギー反応によって起こります。アレルギー反応によって起こる全身症状をアナフィラキシーと言います。
小児は成人に比べて全身症状が出る率が低く、1%程度と言われています。全身症状が出た子どもさんは、次に刺された時にも全身症状が出る可能性が高いので注意が必要です。

検査は?

血液検査で蜂毒に対するIgE(アレルゲン)を調べることができます。・・・スズメバチ、アシナガバチ、ミツバチの3種類のIgEを検査できます。
蜂に刺された後、全身症状がみられた場合は、検査を受けてください。結果が陽性の場合は、「エピペン」の携帯をお勧めします。

処置は?

軽症では、刺された部位を冷やし、外用薬を塗るなどすれば、自然に治っていきます。
刺された部位に、蜂の針が残っていると症状がひどくなるので、針が残ってないかを確認し、残っていた場合は必ず抜いてください。
全身症状が出た場合は、医療機関での治療が必要ですので、速やかに受診してください。エピペンを携帯している人はエピペンの自己注射を行ってください。



違いは? 手足口病は名前が示すように、口内炎と手や足に水疱性の発疹がみられる急性ウイルス感染症です。一方、ヘルパンギーナはのどの奥の口内炎と高熱がみられる急性ウイルス感染症で、手足の発疹はみられません。来院時に、発熱と口内炎があり、ヘルパンギーナと診断されても、その後に、手や足などに発疹が出れば、手足口病と診断が変わります
原因は?

手足口病とヘルパンギーナは主にコクサッキーウイスルA群が原因で起こります。
原因ウイルスがいくつかあるので、何回か罹ります。

これらのウイルスは腸の中で増えるので、腸管ウイルスとも呼ばれます。

症状は?

ヘルパンギーナは39度前後の高熱が2日間出ることと、のどの奥に口内炎ができるのが特徴です。
手足口病は、特徴的な発疹と、口内炎(のどの前側、頬粘膜のことが多い)がみられます。熱はないか微熱のことが多いです

治療は?

特効薬がないので、対症療法になります。高熱に対しては解熱剤を使います。口内炎は多数できるため、口内炎用の軟膏やシールは使いません。痛みを避けるため、熱い硬い酸っぱい食べ物は避けましょう。飲食が難しい時は、イオン飲料、飲むヨーグルトなどの乳製品、ネクターのようなとろっとしたジュースを試してください。飲食が全くできなくなったら点滴します。発疹は1週間ほどで、かさぶたができて治ります。大きな水疱ができて、痛みを伴う場合は、軟膏や痛み止めを使います。


ダニの舌下免疫療法

微量のダニエキスを舌下から体内に取り入れることで、体をアレルギーの原因であるダニに慣らして、ダニによるアレルギー性鼻炎の症状を和らげる治療法です。
対象は?

アレルギー検査でダニのIgE値が高い子どもさんが対象になります。ダニ以外にもアレルギーがある場合は、この治療をするのがよいかどうかを当院で判断します。

どのような人にお勧めですか?
  • 症状が強く、少しでも症状を軽くしたいと考えている人
  • 鼻炎の症状が勉強や仕事に支障となるので、少しでもよくしておきたい人
  • 一年中、何種類もの薬を飲んでいて、少しでも薬を減らしたいと考えている人
  • 眠気など薬の副作用で困っているが、薬を止められない人
管支喘息に効果はありますか?

海外では気管支喘息に対しても行われていますが、日本で行った臨床試験では、気管支喘息に対する効果が出なかったので、気管支喘息に舌下免疫療法を行うことはできません。
気管支喘息とアレルギー性鼻炎の両方を持っている人に、舌下免疫療法を行うことはできますが、気管支喘息の症状を一時的に悪化させる可能性があるため、気管支喘息の治療がきちんと行われ、症状が落ち着いてないと開始できません。
以前に気管支喘息があっても、現在無症状であれば、治療を開始することはできます。

治療開始年齢は?

5歳からこの治療を受けることができます。
開始時期は? 季節に関係なく、いつでも治療を開始することができます。
治療方法は? 

ミティキュアダニ舌下錠』というラムネみたいな口の中に入れると溶ける錠剤を使います。
最初の1週間は「3,300JAU」という量の少ない錠剤を111錠、2週目以降は「10,000JAU」という量の錠剤を111錠、舌下に入れて1分間保持した後、飲み込みます。その後5分間は、うがいや飲食を控えます。
服薬前後2時間程度は、激しい運動、アルコール摂取、入浴等を避けてください。

服薬してはいけない時はありますか? 気管支喘息の症状悪化時は服薬してはいけません。風邪などで体調が悪い時、口の中に傷がある場合、抜歯時にはなどは,ミティキュアの服用について医師の判断を仰いでください。
治療期間は? 目安は3年間です。(最低2年以上)
治療効果は? 2割くらいの人に非常に効果があり、6割の人でくしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの鼻炎症状の改善がみられます。
副作用は?

舌下する薬であるため、口の中の副作用(口内炎や舌の下の腫れ、口の中の腫れ・かゆみ・不快感など)がみられます。他に、唇の腫れ、咽喉(のど)のかゆみ・刺激感・不快感、耳のかゆみ、頭痛などがみられます。
重大な副作用として、服用後に強いアレルギー反応である、アナフィラキシー(ショック)が起こる可能性があります。

費用は? 薬代(調剤料を除く)が3割負担で、月に1700円ほどかかります。
ダニとスギ両方の治療ができますか?  2つの舌下免疫療法を同時に開始することはしません。
主な原因になっている方の舌下免疫療法を行います。



スギ花粉症の舌下免疫療法

微量のスギ花粉エキスを舌下から体内に取り入れることで、体をアレルギーの原因であるスギ花粉に慣らして、スギ花粉症の症状を和らげる治療法です。今年の6月から当院でもこの治療を始めました。
対象は?

スギのIgE値が高い子どもさんが対象になります。スギ以外にもアレルギーがある場合は、この治療をするのがよいかどうかを当院で判断します。

治療開始年齢は?

5歳からこの治療を受けることができます。
何月頃から開始すればいいですか?

スギ花粉が飛んでいる時期は治療を新たに開始することはできません。新規に治療を開始場合は、6月から12月から始めるのが一般的です。但し、舌下免疫療法を始めて3か月位経たないと舌下免疫療法の効果は出てきません。なので、6月から8月位までに始めるのがベターです。

治療方法は?

シダキュアスギ花粉舌下錠』というラムネみたいな口の中に入れると溶ける錠剤を使います。最初の1週間は「2,000JAU」という量の少ない錠剤を111錠、2週目以降は「5,000JAU」という量の錠剤を111錠、舌下に入れて1分間保持した後、飲み込みます。その後5分間は、うがいや飲食を控えます。
本剤を服用する前後2時間程度は、激しい運動、アルコール摂取、入浴等を避けます。
副作用が出た場合を考慮し、家族のいる場所や日中の服用が望ましいとされています

治療期間は? 目安は3年間です。(最低2年以上)
治療効果は? 8割くらいの人にくしゃみ、鼻水、鼻づまりの改善、涙目、目のかゆみの改善といった効果がみられます。
副作用は?

舌下する薬であるため、口の中の副作用(口内炎や舌の下の腫れ、口の中の腫れ・かゆみ・不快感など)がみられます。他に、唇の腫れ、咽喉(のど)のかゆみ・刺激感・不快感、耳のかゆみ、頭痛などがみられます。
重大な副作用として、服用後に強いアレルギー反応である、アナフィラキシー(ショック)が起こる可能性があります。

費用は? 薬代(調剤料を除く)が3割負担で、月に1300円ほどかかります。


先天性風疹症候群

風疹に免疫のない女性が妊娠初期に風疹に罹患すると、風疹ウイルスが胎児に感染して、生まれてくる赤ちゃんが先天性風疹症候群という病気に罹ることがあります。
原因は?

風疹ウイルスが妊娠初期の母親に感染することで起こります。母親が風疹に感染した妊娠月別の発生頻度は、妊娠1 カ月で50%以上、2カ月で35%3カ月で18%4カ月で8%程度です。母親が風疹に罹ったからといって、すべての赤ちゃんが先天性風疹症候群を発症するわけではありません。
逆に、風疹は不顕性感染を起こすことがあるため、無症状の母親から先天性風疹症候群の赤ちゃんが生まれることがあります。

症状は?

先天性風疹症候群の3大症状は先天性心疾患、難聴、白内障です。他に網膜症、血小板減少、発育遅滞、精神発達遅滞などがあります。難聴は、生まれてすぐの聴力が正常でも、2~3歳くらいまでに難聴になることがあるため、3歳になるまで定期的な聴力検査が必要です。

検査は? 臍帯血や赤ちゃんの血液中の風疹IgM 抗体の検出が確定診断として用いられます。IgM 抗体は胎盤を通過しないので、風疹IgM抗体の存在は、赤ちゃんが風疹に罹ったために赤ちゃん自身が産生したという証拠になります。
治療は? 先天性風疹症候群自体を治す方法はありませんが、白内障手術や、人工内耳手術などが行われます。先天性風疹症候群自体を治す方法はありませんが、白内障手術や、人工内耳手術などが行われます。

予防方法は?

風疹ワクチンによる予防が重要です。 女性は妊娠前に2回風疹ワクチンを受ける必要があります。母子手帳でワクチン接種回数を確認し、接種が1回、または受けてない場合は抗体検査を受けるか、ワクチン接種を受けてください。
妊婦の周囲の人もワクチン接種を受けることをお勧めします。
妊娠中のワクチン接種はしてはいけないことになっていますが、ワクチン接種後に妊娠が判明しても、過去のデータによれば障害児の出生は1 例もないので、妊娠を中断する理由にはなりません。


先天性トキソプラズマ感染症

妊娠中のお母さんがトキソプラズマに感染すると、赤ちゃんが脳や眼の障害(特に重要なのは網脈絡膜炎による視力障害)などを持って生まれてくることがあります。妊娠中に罹らないよう気を付けるポイントを知っておいてください。

原因は?

トキソプラズマは長径5μm(目には見えない、赤血球の半分以下の大きさ)の小さい原虫で、哺乳類と鳥類に寄生します。正常な免疫の機能を持っていれば感染してもほとんどの場合、症状はありません。日本では、妊婦の5%がすでに感染して抗体を持っています。妊婦さんが初めて感染した場合に赤ちゃんが感染して症状が出ることがあります。

症状は?

妊娠初期に感染すると流産や胎児死亡の原因になります。赤ちゃんに出る症状として、水頭症、脳室拡大、脳内石灰化、視力障害(網膜脈絡膜炎)などがあります
感染経路は?

1)トキソプラズマは哺乳類と鳥類の肉の中にいることがあり、生肉または加熱不十分な料理を食べることで感染します。
トキソプラズマを含む可能性がある食品は、生ハム、ローストビーフ、レアステーキ、加熱不十分な肉のパテ、生サラミ、生ベーコン、ユッケ、馬・鳥・鹿・鯨刺しなどです。
2)猫の糞中にはトキソプラズマがいる可能性があります。
庭や畑や公園の砂場では、猫がトキソプラズマを含んだ糞をしている可能性があります。農作業、ガーデニング、砂遊びをしていて、土や砂を触った手を口に持っていったり、 舞い上がった土埃を目に入れてしまったり、 土がついた野菜や果物をよく洗わずに食べたりすることで感染します。
3)川の水や井戸水などの生水はトキソプラズマに汚染されている可能性があります

診断は? 血液中のトキソプラズマ抗体を測定します。

治療は?

胎児への感染を減らし、重症度を軽減するスピラマイシンという飲み薬があります

予防方法は?

*咳やくしゃみ(飛沫感染)ではうつりません。
*トキソプラズマがいる動物に触れただけでは感染しません。
※ 妊娠前にトキソプラズマにすでに罹っている場合は問題ありません。今までにトキソプラズマに罹ってない女性が妊娠した場合、下記に注意し、感染のリスクを減らしてください

(注)トキソプラズマに今までに罹っていたかどうかは、抗体検査でわかります。
肉はよく加熱して調理しましょう
生ハム、ローストビーフなどは食べないようにしてください。
果物や野菜はよく洗って食べてください
水道水以外の生水は飲まないようにしましょう。
ガーデニングや畑仕事、猫のトイレ掃除では手袋やメガネをし、仕事の後は、石けんと水でしっかり手洗いをしましょう。
猫を飼っている場合は?

猫が問題視されていますが、必要以上に猫を怖がることはありません。
糞中にトキソプラズマを排泄するのは、猫が初めてトキソプラズマに罹ってから2週間の間だけです。トキソプラズマに感染済の猫(日本の猫の10%)は大丈夫です。
ということで、危険なのは、『トキソプラズマに感染して二週間以内のネコ』だけです。
猫を飼っている人は以下のことに気をつけてください。
1)ネコ用トイレは「毎日」掃除をする。
糞に出て来たトキソプラズマが人に感染できる状態になるまで、通常丸一日以上かかりますので、その前に処理します

2)トイレ掃除やお世話の際、使い捨て手袋やメガネの装着をする。作業後は手洗いを励行する。できれば、ネコ用トイレの掃除は他の人にお願いする。
3)ネコの餌として生肉をあげない(ネコ自体への感染の予防をします)
4)飼いネコは外飼いしない(主に外でネコは感染してきます)
5)妊娠中に新たにネコを飼い始めない(そのネコの感染状態がわからないので)


先天性サイトメガロウイルス感染症

妊娠中のお母さんがサイトメガロウイルスに感染すると、赤ちゃんが難聴、小頭症などの障がいを持って生まれてくることがあります。感染を予防する薬やワクチンはありません。妊娠中に罹らないよう気を付けるポイントがありますので、知っておいてください。
原因は?

原因となるサイトメガロウイルスはヘルペスウイルスに属するウイルスで、どこにでもいるありふれたウイルスです。主に唾液による飛沫感染で子どものうちに感染します。感染してもほとんど症状がないか、風邪症状程度ですみます。日本では、成人女性の70%がすでに感染して抗体を持っています。
妊婦さんが初めて感染した場合や、免疫がひどく低下した時に赤ちゃんが感染して症状が出ることがあります。
抗体のない妊婦さんの1~2%がサイトメガロウイルスに感染し、その内の40%で赤ちゃんが感染しますが、その中で障害がみられるのは約25%で、大多数(約75%)は正常に発達します。

症状は? 赤ちゃんに出る症状として、低出生体重、肝機能異常、小頭症、難聴、運動運動発達障害、網膜症などがあります。
感染経路は? 唾液、尿、母乳を介する感染、性行為による感染があります。
実際に妊娠中の母体初感染の大半を占めるのは、「上の子どもさん」の唾液や尿を介した感染です。第2子以降の子どもを妊娠中のお母さんは、上の子どもの子育ての真っ最中というケースがほとんどです。
妊娠中に上の子どものおむつ交換で尿を触ったり、食事を食べさせる時によだれ(唾液)に触れる機会が多くあるので、初産婦よりも経産婦のほうが感染の危険性が高まります。保母さんなど小さなお子さんとの接触機会が多い職業の人も気をつける必要があります。
診断は? 生後3週間以内の尿中にサイトメガロウイルスがいるかどうか検査します。 
治療は? 抗ウイルス薬などで治療します。
予防が最も重要です!

インフルエンザのように咳やくしゃみ(飛沫感染)ではうつりません。感染している人の唾液や尿に触れた手から感染します。周りの人との接触を避ける必要はなく、手洗いをきちんと行うことが重要です。
主な感染経路は、上のお子さんを含む周囲のお子さんですが、過度に心配することはありません。
下記の点に注意するだけで感染のリスクを1/10まで減らすことができますので、今まで通り、愛情を持って接してあげて下さい。
以下の行為のあとには、石けんと水でしっかり手洗いをしてください!
  
おむつ交換、子どもの食事の介助、子どもの鼻水やよだれを拭く、子どものおもちゃを触る
子どもと食べ物、飲み物、食器(箸、スプーン、フォーク)を共有しない
  おしゃぶりを口にしない、歯ブラシを共有しない、食べ残しを食べない
子どもとキスをするときは、唾液接触を避ける(おでこにキスするなど)
玩具、カウンターや唾液・尿と触れそうな場所を清潔に保つ(きれいに掃除)
サイトメガロウイルスは乾燥に弱いので、敷物や布団類は天日で十分に乾燥させる
妊娠中の性行為の際は、コンドームを使用する


猫ひっかき病

原因は?

バルトネラ・ヘンセレという細菌によって起こる感染症です。バルトネラ・ヘンセレはネコノミを介して猫から猫に感染します。感染した猫は1年以上この細菌を持っていますが、猫には病原性がないため全く症状はありません。そのため、飼い主が気づくことはありません。この細菌に感染した猫に引っかかれたり、噛まれたり、傷をなめられたりすることで人にうつります。
※猫にひっついているネコノミに咬まれたり、非常に小さい傷から菌が入ることもあるので、引っかかれたり、なめられたりしなくても感染します。
※まれですが、犬に感染することもあるので、犬から感染することもあります。

症状は?

菌が侵入して3~10日後に、侵入した部位に発疹ができることがあります
菌の侵入から2週間後に、リンパ腺の腫れ、痛みがみられます。
顔から侵入 ⇒ 首、あごの下 のリンパ腺が腫れる
腕から侵入 ⇒ 脇わきの下 のリンパ腺が腫れる
足から侵入 ⇒ 太もものつけ根 のリンパ腺が腫れる
熱は出ないことが多いのですが、微熱が続いたり、高熱が出たりすることもあります。

検査は? 抗体検査で検査可能ですが、健康保険が効かないため、勧めていません。
治療は? 軽症では無治療で治ります。クラリスロマシン、アジスロマイシン、ミノマイシンといった抗生剤が有効です。
猫の感染状況は?

約7%の猫がこの細菌を持っているという報告があります。ネコノミを介して猫の間で流行するため、猫同士の接触が多いほど細菌保有率が高くなります。そのため、メス猫より雄ネコ、飼い猫より野良猫、の方が保菌率が高い傾向があります。
飼い猫を感染させないためには、家の外に出さないよう躾けることが最良の方法です。定期的なノミの駆除も重要です。獣医さんにご相談ください。