今月の病気(平成22年)
耳下腺が何度も腫れる子どもさんが います。こういうケースのほとんどが この「反復性耳下腺炎」です。 90%が10歳までに自然に治ります。(耳下腺が腫れなくなります) |
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原因 | 耳下腺でできた唾液を口の中に送る管(ステノン管)から口の中の細菌が入り込んで耳下腺の炎症を起こします。ステノン管に細菌が入りやすい構造をしているため、何度も かかります。 |
症状 | 耳下腺が腫れるのは、おたふくかぜと同じですが、おたふくかぜよりも症状が軽く、以下のような特徴があります。 @多くの場合腫れるのは片方だけ A何度も繰り返す B熱は出ない、出ても微熱 C痛みは軽いことが多い D2〜3日で治る E他の人にうつらない・・・通学は可能 はじめは「おたふくかぜ」か「反復性耳下腺炎」か症状だけで区別することは できません。一応「おたふくかぜ」と考えて園や学校を休まないといけません。これでは耳下腺が腫れるたびに園や学校を休むことになります。血液検査で「おたふくかぜ」 の抗体検査を行なって「おたふくかぜ」の免疫があることがわかれば 休まなくてすみます。 |
治療 | ペニシリン系抗生剤を処方します。痛みが強い場合は痛み止めを出します。 |
家庭で気をつけること | 痛みが強い時は、硬い食べ物、酸っぱい食べ物は避けます。少し冷やすとよいでしょう。入浴はかまいませんが、耳下腺を温めすぎないようにしてください。 |
予防対策 | @普段から きちんと歯磨きをして口の中を清潔にしてください。 A虫歯は治療してください。 |
感染性胃腸炎とは細菌またはウイルスなどの病原体が原因で起こる胃腸炎を言います。小児では ウイルス性胃腸炎が圧倒的に多く、「嘔吐下痢症」はウイルス性腸炎と同じ意味で使われます。その原因ウイルスのひとつとして今流行しているノロウイルスがあります。
感染性胃腸炎 | ウイルス性胃腸炎=嘔吐下痢症・・・ノロ、ロタ、アデノウイルスなど |
細菌性胃腸炎・・・病原性大腸菌、キャンピロバクターなど |
嘔吐下痢症の場合、嘔吐は たいてい半日ほどで自然にとまってきます。よって、あわてて吐き気止めの座薬を使う必要はありません。2〜3時間ほど様子を見て なかなか止まりそうになかったら使ってください。ただし、夜中に嘔吐が始まって、吐き気のために眠れない場合は早めに使ってかまいません。
下痢止めも下痢が始まったからといって あわてて飲む必要はありません。発病して すぐは 下痢止めを飲んでも なかなか下痢は止まりませんし、何もしなくても2〜3日に自然に治ることも多いです。下痢止めは、2〜3日たって下痢が続く場合に使ってください。
人は嘔吐や下痢をすることによって、ウイルスを体の外に出そうとしているので、発病早期は 吐き気や下痢を止めない方がよいと言われています。
脳と脊髄を包んでいる髄膜、髄液にウイルスが入り込んで感染を起こす病気です。細菌性髄膜炎は重症ですが、ウイルス性髄膜炎は自然に治る病気です。 | |
原因となるウイルス | 流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)とエンテロウイルスが主な原因ウイルスです。 |
症状 | 細菌性髄膜炎にかかるのは ほとんどが5歳以下の乳幼児ですが、ウイルス性髄膜炎は、すべての年齢にみられます。 発熱・頭痛・嘔吐が主な症状です。一般的な風邪でもみられる症状のため、症状から早期に診断するのは困難です。 通常の風邪にしては おかしいと感じたら髄液検査を行ないます。 |
先行感染 | おたふくかぜの治り際に頭痛・嘔吐がみられた場合は おたふくかぜによる髄膜炎です。 エンテロウイルスは夏に流行するので、夏風邪に伴って頭痛・嘔吐が見られた場合はエンテロウイルスによる髄膜炎が疑われます。 |
診断 | 髄膜炎を疑ったら背中から針を刺して髄液検査を行なって診断をつけます。 |
治療 | 安静にし、解熱剤などで症状をとります。 |
新生児、乳幼児にみられ、学童期以降はまれです。脳と脊髄を包んでいる髄膜・髄液に細菌が入り込んで感染を起こす病気です。 | |
原因となる細菌 | 乳幼児ではヒブ菌が約60%、肺炎球菌が20〜30%で この2つで ほとんどを占めます。5歳になるまでに2000人に1人の乳幼児がヒブ髄膜炎にかかると言われています。松山市では年間約4000人の出生があるので、同じ年に生まれた子で2人がヒブ髄膜炎に罹ることになります。 |
症状 | 発熱、頭痛、嘔吐、不機嫌などがみられ、症状が進行すると痙攣や意識障害も現れます。首の硬直や大泉門膨隆がみられます。症状から早期に診断するのは困難です。 |
診断 | 背中から針を刺して、髄液検査を行ないます。脊髄中の白血球が増加します。細菌が確認できたら、染色を行ないます。また、培養検査をして原因菌を特定します。血液の白血球増加、CRP高値もみられます。 |
治療 | 大量の抗生剤を使って治療します。ステロイド、脳圧を下げる薬なども使います。 |
予防 | 早期診断が難しく、治療も大変です。予後もよくないので、予防が重要です。 ヒブワクチンと肺炎球菌ワクチンは、この2つの菌の髄膜炎に対する予防効果があります。生後2ヶ月から接種可能で同時接種も可能です。 両方できればよいのですが、まだ公費による援助がなく、高額なワクチンですので、どちらか一つを選ぶとすればヒブをお勧めします。 |
予後 | 5%が死亡し、治っても25〜30%に知能障害や運動麻痺などの後遺症が残ります。 |
ヒブワクチンと肺炎球菌ワクチンについて
ヒブと肺炎球菌のワクチンは、生後2ヶ月から受けることができます。早くワクチンを受けたい方は、生後2ヶ月時から まずヒブと肺炎球菌ワクチンを受けてください。3ヶ月時に2回目を受けて、その後は例のように済ませると、早くワクチンを済ますことができます。他にも色々と方法はありますし、もう少しゆっくりワクチンをしていくこともできますので、遠慮なく ご相談ください。3つ同時接種も可能ではあります。
同時接種を2つ行なう場合の例
生後2ヶ月・・・・・・ヒブ@+肺炎球菌@
↓4週間以上あける
生後3ヶ月・・・・・・ヒブA+肺炎球菌A
↓1週間以上あける
生後3ヶ月・・・・・・BCG
↓4週間以上あける
生後4ヶ月・・・・・・ヒブB+3種混合@
↓3週間以上あける
生後5ヶ月・・・・・・肺炎球菌B+3種混合A
↓3週間以上あける
生後6ヶ月・・・・・・3種混合B
従来の日本脳炎ワクチンは @生後6ヶ月(標準的には3歳)以上7歳6ヶ月未満の間に3回・・・・・これをT期と呼びます。 (初年度に 1週間から4週間間隔で2回、翌年1回追加、合計3回) A9歳以上13歳未満の間に1回・・・・・これをU期と呼びます。 T期とU期で 合計4回接種していました。 |
2005年に旧タイプの日本脳炎ワクチン接種後に重症の急性散在性脳髄炎患者の発生があったことから、ワクチン接種を差し控えるよう厚生労働省から通知が出ました。その後、ワクチン接種は ほぼ中止されていましたが、昨年 新しいタイプの日本脳炎ワクチンが発売され、接種が再開されました。 当初 厚労省は、T期のみ新しいタイプのワクチン、U期は古いタイプのワクチンを接種するよう指示していましたが、今秋から、T期U期とも新しいタイプのワクチンを使用することになりました。 また、T期の3回すべて受けられなかった子どもさんに対して、9歳以上13歳未満の間(U期)に受けられなかった回数分を公費(無料)で接種してかまわないことになりました。 ただし、T期とU期の狭間の年齢(7歳6ヶ月以上9歳未満)は これまで通り日本脳炎ワクチンを公費(無料)で受けることは できませんので9歳になるまで待ってください。 13歳以上では 公費では受けられません。自費になります。 |
例・・・・・現在9歳 T期を1回もしていない・・・・・・・・13歳の誕生日の前日までに4回接種してよい T期を1回しかできていない・・・・13歳の誕生日の前日までに3回接種してよい T期を2回しかできていない・・・・13歳の誕生日の前日までに2回接種してよい T期の3回すべて完了・・・・・・・・・13歳の誕生日の前日までに1回接種する(従来どおり) *母子手帳の予防接種欄のA本脳炎ワクチンのところをチェックしてください。空欄がある場合は、接種漏れですので、受付でご相談ください。 |
母乳をあげているお母さんから、病気になった時に薬を飲んでいいかとの相談を受けます。 日本では ほとんどの薬の説明書(添付文章)で「母乳中に移行するので薬剤投与中は授乳を中止させる」ように書かれていますが、これは正しいとはいえません。 お母さんが飲んだ薬のいくらかは母乳に移行しますが、多くの薬では お母さんが飲んだ量の1%未満しか移行しません。 抗がん剤、精神病に用いる薬などを除き、飲んでかまわないケースがほとんどですので、気にされる場合は当院に お問い合わせください。 |
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母乳を中止しないといけない薬 | 免疫抑制剤:シクロスポリンなど 抗がん剤:ノルパデックス、ブリプラチンなど 乱用薬物:アンフェタミン 放射性薬物:放射性ヨードなど 抗不整脈薬:アンカロン |
母乳を止める作用のあるため、飲んではいけない薬 | パーロデル、クリアミン、ボンゾール、エナルモン |
注意が必要な薬 | バクタ、ミノマイシン、クロロマイセチン(抗生剤)・・・・・ほとんどの抗生剤は使用可能です リン酸コデイン(咳止め薬) デルギンG、タベジール(鼻水止め、痒み止め)・・・・・他の抗ヒスタミン剤は使用可能です アスピリン フラジール(トリコモナス、ヘリコバクターピロリの薬) ミニプレス、アセタノール、テノーミン、カタプレス・・・・・不整脈や高血圧の薬は使用して良いものと悪いものとがあるので医師に相談してください リーマス(躁うつの薬) ダントリウム(筋弛緩剤) プリミドン、セルシン、ハルシオン、フェノバール(鎮静剤、睡眠薬、痙攣止め) クリアミン(偏頭痛の薬) |
よくある質問 | 花粉症の薬について アレグラ、アレロック、クラリチン、ザジテン、ジルテック、オノン、キプレス、シングレアなどは使用可能です インフルエンザの薬について タミフル、リレンザは使用可能です ヘルペスの薬について ゾビラックスなどの薬は使用可能です 甲状腺の薬について チウラジール、メルカゾールは使用可能です、主治医とご相談ください |
朝起きたら、鼻血が出た痕があり、シーツが血まみれだったということで驚いて来院されることがよくあります。こどもにはよくあることですので心配ありません。 | |
原因 | こどもは鼻の粘膜の毛細血管が発達しているため、鼻をこすったり、鼻の穴に指を入れてほじったりすると、容易に出血します。アレルギー性鼻炎や鼻かぜが原因になることもあります。 映画のワンシーンのように血液の病気で鼻血が出ることはまれです。 |
処置 | @鼻血が出たら、頭を少し前かがみにします。 A出血するのは鼻の入り口から1cm位のところなので、そこに綿球やティッシュペーパーを入れ、鼻翼をつまんで10分ほど圧迫します。 *頭を後ろにそると、鼻血がのどに落ちて飲み込んでしまいます。飲んだ鼻血の量が多いと吐いてしまいます。血を吐いたということで大騒ぎして病院に連れて来られることがあります。 *首の後ろをたたいたり、冷たいタオルで冷やしたりしても効果はありません。 |
こんな時は病院へ | @10分以上圧迫しても止まらない場合 A体(特に足)に青あざ、出血斑(皮膚に血がにじみでたもの) B鼻血を繰り返し、顔色が悪い場合 |
血液の病気で鼻血が出る場合、血液を固まらせる成分が減っているので、鼻血がなかなか止まりません。また、体の他の部分に青あざや出血斑などの出血の痕がみられます。 *たびたび鼻血が出てもすぐ止まるようなら心配ありません。 |
小児では「さっきおしっこに行ったかと思ったら、またおしっこに行く」ということがよくみられます。膀胱炎などの病気のこともありますが、検尿で異常がなければ、心因性頻尿のケースがほとんどです。 | |
膀胱炎 | 細菌やウイルスが膀胱に入って炎症を起こす病気です。多くの場合、おしっこをする時に痛みを訴えます。アデノウイルスによるものでは肉眼的に赤いおしっこが出ます(出血性膀胱炎)。検尿で白血球や潜血反応が陽性に出ます。抗生剤などの内服治療で改善します。 |
糖尿病 | のどが渇き、多飲多尿となります。夜起きて水分を飲むといったことがよくみられます。検尿で糖が陽性に出ます。疑わしい場合は詳しい検査が必要です。 |
尿崩症 | おしっこを濃くするホルモンが欠乏するために起こります。1日に2〜3リットルも水分を飲むようになります。濃いおしっこが作れないので検尿で尿の比重が低くなります。疑わしい場合は詳しい検査が必要です。 |
心因性頻尿 | @熱もなく、おしっこをする時に痛む様子もないA頻回に おしっこに行くが、尿量はさほど多くないB検尿で異常がない・・・・・・・このような場合は心因性頻尿といって、子どもさんの緊張した心が現れたのかもしれません。子どもさんの環境が急に変わったとか、発表会が近づいたとか、激しくしかったとか思い当たる節がないか考えてください。周りの人が おしっこに行くことを注意すると緊張がさらに高まって悪化するので、知らんぷりをして見守ってください。そのうち自然に治ってきます。 |
院長は、現在松山市医師会の『タバコのない環境推進委員会』(旧名 禁煙推進委員会)の委員に任命され、活動中です。今年も素鵞小学校で「タバコの害」についての授業を行ないます。
H22年10月1日から 煙草税の増税に伴い、たばこが値上げ(1箱300円のたばこが410円〜440円に)になります。これを機会に家族のために是非禁煙してください。 | |
風邪をひくとゼイゼイいう子どもさんが来院した時に、ご両親にお聞きすると、タバコを吸っている方がかなり多いように思います。タバコの害については@早死にする(70歳までに喫煙者の半分が死亡)Aストレスを増やすB学校を休む日が増え、成績が落ちる。また、子どもは吸い始めて短時間にニコチン依存に陥り、ニコチンパッチなどで治療しないと禁煙できません。*簡易ニコチン依存度テストでニコチン依存度をチェックしてみましょう。依存度の高い人は禁断症状が出るため、ニコチンパッチやガムなどでの治療が必要です。ニコチンパッチは1枚400円ほどです。 | |
禁煙は愛です | まず、自分の体を愛してください(大切にしてください)あなたの愛する家族の健康のためにも是非、禁煙してください。 |
禁煙するとその1分後から体にいいことがたくさん起こりはじめます | 1分後・・・タバコのダメージから回復しようとする機能が働き始める 8時間後・・・運動機能が改善される 1日後・・・心臓発作の確立が下がる 2日後・・・味や匂いの感覚が復活し始める 3日後・・・肺活量が復活し始める 1〜9ヵ月後・・・咳、全身倦怠感などの症状が改善する 5年後・・・肺がんになる確率が半分になる 10年後・・・様々な癌になる確率が減少する |
おまけ | 俳優の『舘ひろし』さん(60歳)が「かながわ卒煙塾」の塾長に任命されました。ヘビースモーカーでしたが、今年1月に一念発起し、投薬治療の末に禁煙に成功して神奈川県が行なう禁煙プロジェクトに尽力することになったそうです。人気ドラマ「あぶない刑事」でコンビを組んでいる柴田恭兵さん(58歳)は2006年に肺がん手術を受け、禁煙しているそうで、二人とも「吸わない刑事」へ変身しています。 |
当院では大人の禁煙外来は行なっておりませんが、小児の禁煙外来は行なっています。一般外来が終わってから行いますので、必ず事前にご予約ください。大人の方で禁煙を希望される方は、禁煙外来のある医療機関をお教えしますので、外来受診時に一言おっしゃってください。 |
手足口病は、その名のとおり、手足にできる水疱性の発疹と口内炎を特徴とする急性ウイルス感染症で、例年6月くらいから流行が始まり、夏に流行する夏風邪のひとつです。今年は暖かくなるのが早かったせいか、3月から流行が始まり、今、流行のピークを迎えています。 | |
原因は? | 人の腸管で増えるエンテロウイルスにより起こります。代表的なものとして、エンテロウイルス71型、コクサッキーウイルスA16型、A10型があり、他にコクサッキーウイルスB型、エコーウイルスでも起こることがあります。そのため、手足口病は一度だけでなく、2回以上罹ることがあります。現在流行しているエンテロウイルス71型です。 主に乳幼児がかかる病気ですが、学童でも流行がみられることがあります。通常、大人になるまでに感染するため、大人の発症はまれですが、当院では年間に10名ほど、父母の発症に遭遇します。 |
症状は? | @潜伏期:3〜5日 A手、足底や足背などに四肢末端に2〜3mmの水疱性発疹、膝、おしり、腕から肘にも出ることがあります。痛みを伴うことはなく、3〜7日で消退します。 B口の中の粘膜や舌に口内炎ができ、痛みが強くて飲んだり食べたりできなくなることがあります。 C発熱は約1/3にみられる軽度で、高熱はまれ。ただし、エンテロウイルス71では他のウイルスよりも高熱が出る率が高く、症状がひどくなることが多いので注意が必要です。 |
合併症は? | 髄膜炎、小脳失調症、脳炎などの中枢神経系合併症、心筋炎、急性マヒなどがみられることがあります。 頭痛、嘔吐があれば髄膜炎、意識障害があれば脳炎、顔色不良・頻脈などがあれば心筋炎の可能性があるので医療機関を受診する必要があります。 エンテロウイルス71では中枢神経系合併症、コクサッキーウイルスA16では心筋炎に注意が必要です。 |
治療は? | 特別な治療を要しないことがほとんどで、自然治癒が期待できます。 口内炎に対しても特に治療はしませんが、痛みが強いと食べられなくなることがあります。口の痛みを避けるため、熱い・固い・酸っぱい食べ物は与えないでください。固形物を全く受け付けない時は、脱水を避けるため、水分を十分に与えてください。お茶・イオン飲料・乳製品(飲むヨーグルト・カルピスなど)・コーンスープ・プリンがお勧めですが、カロリーのないお茶や水ばかりでは低血糖になることがあるので、糖分も与えてください。水も飲めない場合は点滴が必要になります。 |
予防法は? | 感染は主として のどから排泄されるウイルスによる飛沫感染で起こりますが、便中に排泄されたウイルスによる経口感染や水疱内容物からの感染などもありえます。そのため、予防法は 患者に近づかない、手洗いの励行などになります。 手足口病では、便中へのウイルスの排泄は2〜4週間続くため、長期にわたり感染源になります。そのため、発病後1週間程度の隔離では流行を防ぐことはできません。また、手足口病は ほとんどが軽症で、脱水及び髄膜炎・脳炎などの合併症に注意していれば問題は少ないため、発症した児を4週間も欠席させるのは現実的ではありません。そのため、保育園・幼稚園・学校の登校登園の可否については、熱がなく、元気で飲食ができれば登校登園可能となっています。 |
川崎病は 川崎富作医師がみつけた病気で、公害病ではありません。全身の血管に炎症を起こす病気ですが、原因は完全に解明されていません。4歳以下の子どもに多く、兄弟発症が1〜2%にみられます。伝染する病気ではありませんが、1名みつかると、その後続けて2〜3名見つかることが多いです。 | |
症状は? | @高熱が続きます。(治療しないと38〜40度の熱が5日以上続きます。) A両目の結膜の充血 Bくちびるが赤くて切れる、いちご舌 C発疹・・・主に体に赤い発疹がみられます。BCGをした後が赤く腫れます。 D手足の先が硬く腫れます。熱が下がってくると、指の爪のところから皮膚がむけます。 E首のリンパ節が腫れます。 *初めから全部の症状がそろうのはまれで、日を追うごとに@〜Eの症状が順次現れてきます。 |
合併症は? | 心臓に酸素を送る冠状動脈が太くなったり(拡張)コブ(動脈瘤)ができたりすることがあります。大きいコブができると狭心症や心筋梗塞を引き起こすのでやっかいです。 |
検査は? | 血液検査で、白血球が増え、CRPが高くなります。心臓のエコー検査で心のう液貯留や冠動脈瘤(または拡大)がみられることがあります。 |
治療は? | 心臓の障害を防ぐために、大量のヒト免疫グロブリンを点滴します。血液を固まりにくくする薬(アスピリンまたはフロベン)の内服を行ないます。 |
経過は? | 入院してきちんと治療さえすれば、徐々によくなり、2週間ほどで退院できます。心臓の合併症がなければ特に心配することはありませんが、合併症がある場合は、退院後も検査や治療が必要です。再発は2〜3%にみられ致命率は0.1%前後です。 |
今年2月から 子ども用の肺炎球菌ワクチンが使えるようになりました。当院でもこのワクチンの接種を始めますが、高額(1回9000円)なので お勧めしにくいのが現状です。なお、ワクチンは十分供給される予定ですのでヒブのように何ヶ月も待つことはありません。 大人用の肺炎球菌ワクチンは2006年から使われていますが、大人用のワクチンを子ども用に使うことはできません。 |
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肺炎球菌とは? | 名前のとおり、肺炎の原因となる細菌ですが、子どもの場合、肺炎のほかにも中耳炎、菌血症、細菌性髄膜炎を引き起こすことがあります。抗生剤で治療可能ですが、最近では抗生剤が効きにくい耐性菌が増えてきたため、ワクチンによる予防が注目されています。 |
こどもの細菌性髄膜炎の原因は? | 子どもの細菌性髄膜炎の原因で最も多いのはヒブ菌で、日本では毎年600人ほどの子どもがヒブ菌による髄膜炎に罹っています。その次に多いのが肺炎球菌で、毎年200人ほどの子どもが肺炎球菌による髄膜炎にかかり、内1/3くらいが死亡したり重い障害が残ったりしています。このふたつの菌で細菌性髄膜炎の約80%を占めています。 |
肺炎球菌ワクチンって? | 子どもの肺炎球菌ワクチンは すでに世界100カ国近くで取り入れられ、10年前に発売されて以来、世界で何千万人もの子どもに接種されています。今回のワクチンは世界で標準的に使われているワクチンと同じものです。2000年からこのワクチンを定期接種にしているアメリカでは、肺炎球菌による菌血症と髄膜炎を98%減らすことができたと報告しています。 |
ワクチンの副作用は? | 注射した部位の発赤や腫れ痛みがみられることがあります。全身的な副反応として、発熱などがあらわれることがあります。まれにショックまたはアレルギー反応が認められることがあります。 |
対象と接種方法は? | 生後2〜6ヶ月......27日以上の間隔をあけて3回接種(ただし3回目は1歳までに済ませる)その後、60日以上の間隔をあけて1回追加接種 生後7〜11ヶ月.....27日以上の間隔をあけて2回接種、その後60日以上の間隔をあけて1回追加接種 1歳.....1回目の接種後、60日以上の間隔をあけて1回追加接種 2〜9歳.....1回接種で終了 |
ワクチン接種には いくらかかりますか? | ワクチンは自費になりますので、医療機関によって料金が異なります。当院は1回9000円です。 |
最近、テレビや新聞でも報道されていますが、子宮頸がんを予防するワクチンが使えるようになりました。当院でもこのワクチンの接種を始めることになりました。 | |
子宮頸がんって? | 子宮の頸部(入り口付近)にできる癌を『子宮頸がん(しきゅうけいがん)』と言います。日本では年間約1万5千人が子宮頸がんにかかり、約3500人が死亡しています。子宮頸がんは遺伝に関係なくかかり、性交経験がある女性なら誰でも発症する可能性があります。最近では20代後半から30代の若い女性の発症が増えています。20代から30代の女性にみられるがんの中で最も多いのが子宮頸がんです。 |
原因は? | 子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染により起こります。HPVは皮膚や粘膜に感染するごくありふれたウイルスで、100種類以上のタイプがあります。このうち約15種類が子宮頸がんの原因となるため、発がん性HPVと呼ばれています。中でも16型と18型の2種類が原因となることが多く、子宮頸がんを発症している20〜30代の女性の約70〜80%から見つかっています。 発がん性HPVは主に性交渉により感染し、女性の約80%が一生に一度は感染すると考えられています。ただし、発がん性HPVに感染しても90%以上は体内から自然消滅するため、子宮頸がんに進展するのはごくわずかで、感染者の約0.15%と推定されています。 また、感染してから子宮頸がんになるまでには、通常、数年から数十年と長い年月がかかるので、定期的な子宮頸がん健診を受けていれば、がんになる前の状態(前がん病変)で発見し、治療することが可能です。 |
子宮頸がん予防ワクチンってどんなもの? | 発がん性HPVの中でも特に子宮頸がんの原因のほとんどを占める16型と18型の感染を予防するワクチンです。海外では すでに100カ国以上で使用されています。このワクチンにより、子宮頸がんの発症をかなり減らすことができると期待されています。 このワクチンの効果がどれだけ長く持続するかについては、現在も調査が継続中です。現時点ではワクチンを接種してから最長で6.4年までは前癌病変を100%予防できることが確認されています。 |
子宮頸がん予防ワクチンの対象と接種方法は? | 対象は10歳以上の女性ですが、性交する前に接種することが望ましいので中学卒業までに接種を済ませることを お勧めします。一回0.5mlを3回(初回接種、初回から1ヵ月後、初回から6ヵ月後)上腕の三角筋に筋肉内接種します。 接種期間の途中で妊娠した場合には、その後の接種を中止します。 |
副作用は? | 注射した部位の痛みや痒み、発赤や腫れがみられることがあります。全身的な副反応としては疲労感や頭痛、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛などがあらわれることがあります。なお、まれにアラフィラキシー様症状を含むアレルギー反応、血管浮腫が認められることがあります。 |
ワクチンを接種すれば子宮がん検診は受けなくていいの? | このワクチンでHPV16型と18型の感染を防ぐことができますが、全ての発がん性HPVの感染を防ぐことはできません。そのため、ワクチンを接種していても子宮頸がんにかかる可能性はあります。したがって、ワクチンを接種しても必ず子宮頸がん検診を受けてください。 |
このワクチンで子宮頸がんや前がん病変を治すことはできますか? | 治すことはできません。すでに感染しているHPVを排除することもできません。 |
ワクチン接種には いくらかかるの? | 当院は一回15000円(要3回接種)です。ワクチンは自費になりますので、医療機関によっては料金が異なります。 |
高熱が出ると、どうしてもすぐ解熱剤を使いたくなりますが、使いすぎは禁物です。最近はテレビなどで『熱を下げないほうが風邪の治りが早い』という報道があり、以前より解熱剤を使う人は減ってきたように思います。 | |
発熱は生体防衛反応です。むやみに下げるのは禁物です。 | 人間の体にウイルスが侵入すると、そのウイルスをやっつけるために、人間は色々な物質を出してウイルスと闘います。熱を下げる物質も その一つです。というのは、体温が平熱のときよりも、38〜39度の熱がある時の方がウイルスは増殖しにくいからです。また、人間の免疫機能も発熱とともに高くなります。よって むやみに熱を下げるとウイルスの増殖を助けることになってしまいます。 |
高熱だけでは脳に障害は起きません。 | よく『高熱が出たから脳に障害が起きるのではないか?』と質問されますが、熱が出て脳の障害が起きるかどうかは、熱の高さによって決まるのではなく、熱の原因によって決まります。脳症、脳炎、髄膜炎などが原因の場合は脳に障害が出ることがありますが、通常の風邪では障害が出ることはありません。子どもは大人より高い熱が出やすく、時には40度を超えることもあります。熱が高いと心配になりますが熱の高さは問題ではないのです。 |
解熱剤は どういうタイミングで使うといいの? | 38.5度以上の熱が出て、しんどそうな時に使ってください。熱があっても そこそこに食欲があり、元気そうなら解熱剤は不要です。また、ぐずってよく眠れない時にも使ってかまいません。逆によく寝ている子を起こしてまで使うのはお勧めできません。解熱剤は8時間以上間隔をあけて使ってください。使いすぎると肝機能障害などの副作用が出ることがあります。 |
解熱剤を入れても熱が下がらない場合は どうすればいいの? | よく『解熱剤を使ったが熱が下がらないのはなぜ?』という質問を受けますが、多くは解熱剤を早く入れすぎたことが原因です。解熱剤は上がりきった熱は下げることができますが、上昇中の熱を下げることはできません。手足が冷たく寒気が残っている時には解熱剤はききません。手足が熱くなり全身熱くなった(熱が上がりきった)のを確認してから解熱剤をつかってください。解熱剤を入れても熱が下がらない場合は(6〜)8時間後に解熱剤を使ってください。 |
熱が出たときは 冷やすの?温めるの? | 寒気があって震えている時、手足が冷たい時は衣服布団などで温めてください。 手足が熱くなり、全身が熱々になったら温めるのを止めてください。 冷却シートなどで冷やしてもいいですが、冷やされるのを嫌がる場合は無理強いする必要はありません。 水分補給も忘れずに! |